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「飼育の目安」となる10の資料

基本は、「生態に学び、その能力が最大限に発揮できるように、飼育環境に配慮する」ことだと思います。
〇か✕かの結論を急ぐより、〇に近い△を探し、自分に一番合う方法を試してみてください。ネットの情報に過度に依存すると、自分で考える習慣を失くします。見る、触れるなど五感をフルに動員して観察しましょう。

全ての養蜂は、ローカルです。以下は、「知多半島版 飼育の目安」となる資料です。

全ての養蜂はローカルです。地域で育つ植物は、別の地域の植物とは異なります。気候や季節はさまざまなタイミングで変化し、様々な自然と人工の環境下にあります。養蜂は道を隔てた、あちらとこちらで環境が異なる局所的な条件に左右されます。

資料 その1
この図は2016年春の通常よりかなり早い時期の飼育群の初分蜂例です。
この地方では、分蜂は4月にピークがあります。少し間をおいて6月頃の②のような分蜂があります。これは、全ての群れに共通する分蜂パターンではありません。
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(注)表のそれぞれの日数は、研究者や参考資料により差があります。

❶第一分蜂から10日前後の間に第二、第三の分蜂が起こる可能性があります。
❷第二分蜂以降の分蜂は受精前の女王なので分蜂から1週間前後の間に交尾飛行のため巣箱の外に出ます。
❸同一のコロニ―からの分蜂は、孫分蜂(夏分蜂)を除き、2週間で終了します。

❹繁殖に適しているのは、第二分蜂群または、巣箱に残る群れです。第一分蜂は女王の高齢化と孫分蜂の頻度が比較的高く、繁殖には適していません。ただ強勢群となる可能性もあります。第一分蜂の母親女王群は、比較的ハチの数も多く、入居後に即日産卵開始する女王も存在することから、早い時期の群勢の回復も見込めます。交尾飛行も不用で群勢が安定しているため、人により譲渡群として選択されることもあります。
①巣板の成長は時間の経過に正比例するものではありません。
②分蜂後から6月頃まで正常な群れは急激に増加する傾向があります。
③蜜源の減少と寒さのため11月頃から成長は止まります。
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資料 その2

第二分蜂以降の新女王は、分峰からおおよそ7日以内に、以下のような場所へ交尾飛行に飛び立つます。この期間が雨が多い場合や、交尾飛行中の女王がなんらかのアクシデント遭遇した場合は、コロニーの持続に支障があります。巣門の高さを7mm前後に保つことなど、交尾飛行が円滑に行われるか注意して観察しましょう。

『「女王バチの交尾は一生に一度だけ、同時に15匹程度の雄バチと行われます。その雄バチの精子を溜めて順次産卵を続けていきます。ですから同じ世代の働きバチ同士は、父親違いの姉妹ということになります。」玉川大学 中村純教授 「そこが知りたい、ミツバチ不思議百科」より』

西洋ミツバチの生態と同様なら、以下のDCAが交尾場所の全てではないようです。
資料 その3
資料 その4

巣箱イラストは、以下の条件で描きました。

1スノコは、アカリンダニの防除や夏の換気のためにも効果的です。構造等詳細 下図のように底板も、夏季は網や四方巣門がよいかもしれません。

2個々の重箱サイズは久志 富士男著「我が家にミツバチがやってきた」P26~P27を参考にしました。

3ホームセンターで入手可能な材料で、日曜大工程度の技術で、女性でも持ち運びできる軽量かつ、簡素な構造を目指して今後も修正していきます。

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スノコの制作は次の条件が必要です。

❶空気より重いアカリンダニの防除剤(メントール)やギ酸を上部より蒸散させます。そのために
上蓋と中蓋の間に、袋に入れたメントールまたは、ギ酸パテの容器と置くための十分な空間と蒸散した気体が外に漏れない機密性を確保することが重要です。
❷巣箱の冬の保温と夏の通風という反する2条件をある程度満たすこと

スノコの穴は幅6mm以下だとハチがロウでふさぎます。10mm以上だと冬の保温に支障があります。穴の幅が8mm前後でかつ、メントールまたはギ酸を入れる容器の高さを確保しなければなりません。

上蓋までの高さが10mm以上だと、上蓋とスノコの間の空間に、無駄巣を沢山作られる可能性が高いです。麻布でスノコ上を覆うことは、ムダ巣防止とある程度の冬の保温ができますが、スノコ上部への給餌の際のハチのスノコ上の往来や、アカリンダニ防除剤の下への拡散を阻害するなと、効果は限定的でお勧めしません。

❸中蓋の巣箱からの着脱と制作が簡単なこと

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これは一例です。巣箱のサイズや制作技術にあわせて、上のパターンからお選びください。空間の確保と機密性を考える冬は〇印のものを推奨します。夏に、密閉度の低い蓋を用いたり、上蓋に換気口を設けたりすることは、臭いの外部放出によりスズメバチやスムシを誘引し、それを防ぐために、換気口にハチが密集します。このことからも、気密性の低いものは、季節を問わずお勧めしません。

スノコは井桁と平板とトップバー3つの方式がありますが、それぞれに一長一短があります。上蓋の構造や保温性や通気性や、薬剤投与時の下方蒸散率等の、周辺環境との組み合わせで考える必要が、あります。
天板とスノコの間に、ムダ巣を作られないように、高さをメントールやギ酸の容器の厚さに抑えると共に、天板の内側を金網で裏打ちをしたりして、ムダ巣を作ることを防ぐ工夫が、必要です。

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資料 その5
探索ハチは、いつ探索活動に出かけるの?


ニホンミツバチの新営巣地の探索開始は、セイヨウミツバチで言われている分封蜂球形成後とは異なり、分蜂以前から、探査のため外勤する。という説が有力です。

蜂球形成後の新営巣地決定までのプロセスについても、セイヨウミツバチについては、観察記録や論文がありますが、ニホンミツバチについての詳しい解析はまだないようです。(いずれも2015年現在です)
分蜂時の一時待機の蜂球は、稀にハチ場の場外と言ってよい場所に作ることや、視認可能な場所に蜂球を作らないまま飛び去ることもあります。本巣から約200m 内の場所に作ることが多いようです。

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資料 その6

会員向け・観察会研修会主催者向け 兼用

面布(養蜂用の頭部を守る装具)着用、肌の露出を避けてください。日本ミツバチは西洋ミツバチより性格が穏やかですが、状況により刺す場合も、ままあります。素手素面での取り扱いは、避けましょう。


1.面布は必ず着用してください。面部の形状や、品質により、上部の隙間や、首回りから、侵入しやすいので、これを防ぐ方法をとるか、可能な限り養蜂専用の面布を使用してください。

手袋、特に胸当てのついていない面布や、農作業用簡易面布の場合は、頭に巻く手ぬぐい、バンダナ、首をタオルで保護してください。隙間から侵入されることがあります。

*手袋は皮製または、突刺しに強い品質を選択してください。薄地の物はミツバチの針が、より通ります。

2.過去に、アナフィラキーショック(蜂毒)症状が出た方は、観察を遠慮してください。飼育場所は、携帯が通じない場所にもあります。単独での観察は特に危険です。危険回避のため協力ください。

3.野外ではハチだけでなく、ダニや毒クモ、マムシ等の危険な生物に遭遇します。暑い日でも、長袖、スラックス、スニーカー(できれば、長靴)および、帽子を着用してください。ミツバチは黒いもの、香りのするものを好みます。髪の毛にも、潜り込みます。帽子は髪の毛全体を覆うものを被るのが基本です。長い髪の方は全体をまとめ、覆ってください。

*香水、整髪料は、ミツバチだけでなく、スズメバチも誘います。
*帽子、服や靴の色は、できるだけ白っぽい色や明るい色を選んでください。

4.場所や状況により、個人が特定できる肖像写真や、撮影禁止の場所があります。撮影に意識が集中し、侵入禁止エリアや危険エリアに立ち入ることもあります。撮影禁止は、盗難をさけるためです。ご協力ください。係の指示に従ってください。肖像、風景を問わず撮影前に、互いに承認を得るのがマナーです。

安全確保とプライバシー保護のため、ご協力をお願いします。(^.^)/~~~
 

資料 その7
巣箱の構造と分蜂時の探査バチの行動

Q

①重箱式の内径は25×25×H15cm前後が多いですが、これは重箱の黄金比のようなものでしょうか?

 

②最強の待ち箱は、(丸洞+重箱2段)のハイブリット式というのは本当ですか?

横の長さをXcmとすると、縦の長さは 50-Xcm
長方形の面積S(㎠))=X(50-X)となります。
上図のグラフのように、25cmの正方形が、面積は最大となります。

 

前述のように、同じ長さの材料を使用するなら、内径を25×25の正方形にすることが面積を最大にし、計算上はムダがありません。(実際は、木材の多くは製材所で、尺貫法により製材切断されるために、計算上の合理性とは異なります)それでも、高さで容積を調整することは容易です。正方形の優位性はゆるぎません。

 

『「(前略)巣穴の容積はコロニーの長期的な生存のために、おそらく最も重要な候補地の特徴となる。10リットル以下の巣穴に住むコロニーは、冬を越せるだけの蜂蜜を蓄えることができないからだ(後略)「ミツバチの会議」トーマス・シーリー著 築地書館 P85転載』
 

10L の容積が生存を分ける下限なら

1リットルとは、縦、横、高さが、それぞれ10cm、すなわち、
10(cm)×10(cm)×10(cm)=1000㎤となり

10Lでは、10,000㎤となり
10,000÷(25×25)=16cm(高さ)が導き出されます。

25cm×25cm×16cmの巣箱の寸法が、10Lの容量です。
経験よると、待ち箱は20L~30L(重箱2段~3段)が、最適だと言われています。

 

また、このサイズに近い、25×25×15の内径の重箱で、西洋ミツバチの分蜂群を捕獲できました。洋の東西を問わないようです。

 

 

❷について
待ち箱は、20L~30L(重箱2段~3段)の容量が最適との結論は、経験則によるものです。

その結果、最下段を最も捕獲に優位な丸洞に変更し、その上に操作性に優れ、常設巣箱としても使用可能な重箱を載せました。(捕獲のみに目的を絞るなら、20L~30Lの丸洞が優位と思われます)

 

❷❸について

ハイブリット待ち箱の優位性や、巣落ち防止棒が探索バチの行動を阻害するとの推測について、これらを証明する実証実験や、信頼できる公開されたデータは、今のところ確認できていません。

ただ、経験値の高い飼育者の多くが、ハイブリット待ち箱の優位性を信じ、巣落ち防止棒を設置した待ち箱は、捕獲率が低下すると判断しています。


探索行動

・探索jバチは、巣箱の内部を飛行しながら、または内壁や底、天井を歩いて、新しい住居にふさわしい容積があるか測定する
・一度に20~30匹以上の探索バチが待ち箱に集合しないと、女王を始めとするミツバチの分蜂群は到来しないと言われています。

資料 その8
巣門(巣箱の出入り口)の構造とスズメバチの防御

左の図は、巣門の大よその外形です。


巣門の大きさは、ハチが出入りしやすいこと、夏から晩秋にかけてのスズメバチからの防御、場所により冬の保温性を考慮する必要があります。

 

出入り口は、高さ7mm 幅150mmが重箱式では、多いようです。
 

なお、出入り口を調整できる可動式の巣門も有効です。

資料 その9
トップバーの形状(断面図)と巣門(巣箱の出入り口)の対するトップバーの設置方向

​​図の②をより好むので、特段の理由がない場合は②を選択するのが順当かと思われます。

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「日本ミツバチの飼育の目安」を探るための資料 その10
アカリンダニ症等の病害虫の防除対策や、蜜源の規模に合わせた適正配置 「小を繋いで大となす」

究極の適正配置は、巣箱の置き場1ケ所に対して1群の配置です。ただし、環境の悪化や、その他の事情により、理想どおりには、いきません。ある西洋ミツバチの研究者によると、野生のミツバチの平均的な分布は1km内外に1群だそうです。このことから、野生のミツバチの密度に比べると、飼育下のミツバチは常に過密です。

 

在野のミツバチ研究の先駆者、久志氏は、「ハチ場に一つも強勢群がいなくなったら、飽和状態とみてよい。ハチ場の群れの数を飽和状態の3分の2程度に制限するのが良い」と述べています。

アカニンダニ始めとする病害虫の防除のためには、できる限り巣箱の間に距離を置きます。1か所につき少数の群を、多数のハチ場に分散配置します。分蜂群が増加したら、健全な群れは地域に放群する、他の飼育者に譲る、共同で管理する等、1ケ所に密集することを避けてください。

アカリンダニ症に対する今後の指針
  「2018.9.2 於京都 日本ミツバチ養蜂研究会 提言より」

 

・他の地域の群れを安易に移動させない。人為的な移動が必要な時は、必ず移動の前にダニ寄生がないことを確認する。

・一カ所の飼育密度を抑え、分散飼育する。
・アカリンダニ寄生が疑われる場合には地域の家畜保健衛生所へ相談する(巣箱の周囲にハチの死体が目
立つ、飛び方がぎこちない、Kウイングなど)

・予防検査のため簡易なダニ検査法を工夫する。   例えば頭部を除き、露出した気管の色を拡大鏡で観察する。

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