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コロニーの保全その1 アカリンダニ対策 

1 アカリンダニ対策の基本

夏を過ぎてからのアカリンダニの本格的な予防対策

厚く、保温

一例として、アカリンダニ症が、多く確認されるようになる前に採蜜を終え、不要な巣板を取り除き、可能なら巣箱を4段以下にコンパクトにまとめ、ハチが巣板に厚く密集するのを促します。巣箱内の保温に努め、体力の温存と薬剤の蒸散をすすめます。通常の方法でメントールを巣箱の上部に置いても、一説では、効果的な蒸散は上から50cm程度が限界、また巣箱下段からの送風機によるメントールの蒸散促進は、巣群に近接しないと、効果的ではないとも、言われています。

 

アカリンダニ症に対する今後の指針   「2018.9.2 於京都 日本ミツバチ養蜂研究会 提言より」

・他の地域の群れを安易に移動させない。人為的な移動が必要な時は、必ず移動の前にダニ寄生がないことを確認する。

・一カ所の飼育密度を抑え、分散飼育する。
・アカリンダニ寄生が疑われる場合には地域の家畜保健衛生所へ相談する(巣箱の周囲にはハチの死体が目立つ、飛び方がぎこちない、Kウイングなど)

・予防検査のため簡易なダニ検査法を工夫する。例えば頭部を除き、露出した気管の色を拡大鏡で観察する

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アカリンダニ発現、廃巣までの経過
1アカリンンダニの症状と現発後の日本ミツバチに与える影響
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%8B

日本ミツバチでは、夏季でもアカリンダニ寄生のコロニーの消滅が見られるが、逃去や女王バチの産卵停止、ハチツヅリガの被害など他の要因と複合的に起こるため、コロニー消滅の原因を特定しにくい(「ミツバチに寄生するアカリンダニ」論文引用)また、寄生されるとコロニー消滅率が非常に高い。

もっとも典型的な症状は「徘徊、Kウイング 冬場のコロニー消滅」と言われていますが、私たちのハチ場で実際に確認できた症状は以下の通りです。
①巣箱の周囲に粘性の強い糞がみられる         
②徘徊するハチが多数出現する
③低温度下にも関わらず、巣箱の外側、巣門付近にハチの塊りが確認される。            
④巣箱の内外に、巣箱の周囲に、連日多くのハチの死骸が見られる 

日本応用昆虫学会誌 参考論文 分類から生態対策」 

 

 

2アカリンダニ症の発現から同定、廃巣処理、予防措置までの顛末

アカリンダニの寄生は冬場に増加、夏場に低下する


28.1.05 1月定期内検異常認められず(巣箱内部撮影写真参照)
28.1.20 初雪
28.1.22 巡回点検 №3-3号群 巣箱周辺に多数に死骸発見 徘徊なし

28.1.24 天板隙間を塞ぎ保温処置 原因は低温による死亡と推定(後日この推定は誤りで、アカリンダニによるものと判明)


28.1.25 温措置効果確認のため点検→徘徊行為、多数の死亡確認
28.1.26  K・Iの2か所ハチ場計6群のみ検査依頼、10キロ以上離れたAハチ場は未検査
同日午前 家畜保健衛生所へ電話で寄生虫検査依頼

申請書作成 同日午前職員ハチ場臨検、6群の検体採取

28.1.26   No3-3群のみ検査終了 アカリンダニ寄生確認の報告電話受信
28.1.27  上記No3-3群以外からは、寄生はなしとの報告を電話受信
28.1.31 当該アカリンダニ寄生コロニー埋設処理 他の非検出コロニーの内近接のKとIハチ場は
メントール処理 Aハチ場未処置 当該コロニーの使用済み巣箱は、水洗い、バーナーでの熱処理  完了


28.2.07 未検査Aハチ場異常認められず

28.2.19 寄生バチのいるKハチ場と10km以上離れているため、未検査とメントール未処置Aハチ場1群にアカリダニ寄生症状確認


28.2.24 同群にメントールをベープマットの器に入れ処方

28.2.27 K・Iハチ場5群は2月定期内検異常認められず 発現より2週間経過(アカリンダニの成虫までの生育期間)終息


28.3.04 未検査Aハチ場1群 廃巣採蜜 結果 Kハチ場4群中1群 Iハチ場2群中0群 Aハチ場 1群中1群 計2群喪失

28.5.01 現在までアカリダニ寄生症状認めらず、残った群れに異常は認められなかった。

 

3愛知県西部家畜保健衛生所長への「家畜病性鑑定」の意義
病制鑑定により、早期の対策(隔離、防除、廃巣、埋設)が可能となり、病気の拡大や伝染を防ぐことができる。情
報を共有することに予防知識が深まる。

 

4アカにンダニの予防について

アカリンダニの寄生バチからの水平移動
アカリンダニは、ミツバチの気管外では、短時間しか生きられない、アカリンダニの移動は、個体間の密接な接

触が必要であると考えられる。ミツバチの他のコロニーの迷い込みや、盗蜜も原因の一つと推測される。数十メル以内に置かれたハチ場のコロニーはほぼ100% (中略)西洋ミツバチでは2km離れた場所でも26ケ月後に寄生が確認(「アカリンダニ 分類から生態対策」論文より)

  

No3-3群が最初に、アカリンダニに寄生された理由
推測ですが、次の要件が考えられます。
①周囲にフキが群生してことから、湿気が多いため、ダニの繁殖条件がよい
②同「Kハチ場」でも、最北端に位置し、巣箱の出入り口の方向が他と異なり、他の巣箱と採蜜する蜜源が異な

る。従ってアカリンダニに寄生された他のハチと接触する機会も他と異なること。

 

アカリンダニの寄生を遅らせる方法、または対処療法

①一のハチ場に置く巣箱の間に相当の距離をおき、巣箱(コロニー)は極力減らす。

②巣門の方向や動線が重ならないよう工夫、迷いバチを減らす
③ダニの増殖条件を減らす 湿気の多い場所をさけ、地上から高い位置に置く
④ハチ場の間はできるだけ離し、近くに他人のハチ場のないことを確認してから置く

⑤効果的にショートニングパテとメントール療法を試みる

 

ショートニングパテは殺虫効果はなく、ショートニングパテの油が、アカリダニの成虫の移動を阻害することで罹患率が減じると言われています。またメントールも同様にダニの嗅覚を乱すことにより、アカリダニに寄生された年老いたハチから、より寄生期間の長い若いハチに移動する確率を減らします。これに対して年老いたハチは足でダニを払い落とす習性がより強く、寄生する確率が比較的少ないと言われています。メントールは、アカリダニが、若いハチと年老いたハチを、かぎ分ける嗅覚をも乱します。

⑥定期的に病生鑑定を受ける

 

 

5アカリンダニに寄生され再生不可能なコロニーと巣箱の処理

次のようにメールにて、研究者の方のアドバイスを受けました。

質問 

①巣箱の処分について

②メントール療法について

 回答

 ご連絡ありがとうございます。巣箱の焼却は必要ありません。飼育されている他の群への寄生拡大を防ぐ目的であれば焼却する のも一つの選択手段だとは思いますが、すでに全国的に布が拡大している状況で、寄生された群をすべて焼却するのは現実的ではありません。寄生された群の巣箱の再利用という観点でも、しっかり洗ってバーナーで表面を焼くなどすればダニは死滅しますので、焼却する必要はありません。

 

 冬期のメントール処理ですが、気温が低く揮発量が少ないので、効果はあまり期待できません。しかし、メントール処理した群で越冬成功率が少し高くなりますので、入れないよりは入れたほうがまし、くらいの感覚で試されてはいかがでしょうか。電池式送風機によってメントール揮発量は増加しますので、お試し下さい。メントールの効果が高くなるのは3月に入ってからだと思います。

〇アカリンダニ防除材の投与について

ギ酸は、危険物だけでなく、毒物及び劇物取締法により、「劇物」にも指定されています。肌に触れたり、吸い込んだりしないよう、また常温では引火性が強く、取り扱いが難しいものです。蜜や巣碑へのギ酸の残留性について、以下のサイト記述されています。(注1) このような安全安心の立場から、私たちは、自己の責任の範囲内でメントールを、使用しています。

(注1)『守ろう日本ミツバチ プロジェクト 8.ギ酸について | savebeeproject 』
 

アカリンダニ症の予防と治療については、現在のところ、どのような薬剤を、どのような条件下で使用するのが最も安全で、かつ効果的なのか不明です。法律で養蜂に使用できる薬剤は限られています。ギ酸とメントールも国内法では、養蜂に使用できる薬剤として認可されていません。メントールは蜂蜜以外の食品の一部では、食品添加物として許可されています。蜂蜜への添加は認可されていません。より安全で安心な防除の方法が確立されることを願っています。

​〇病生鑑定について

以下は、ある家畜保健衛生所の病生鑑定の手順の一例です。実際は、各家畜保健衛生所により、かつ事情により対応が異なります。依頼される場合は、必ず事前に当該衛生所に、お尋ねください。

キャプチャ1.JPG

「メントールの蒸散を促すスノコの取り付けについて」

スノコの制作と使用についは、必要の条件を満たす必要があります。

 

❶予防には、ショートニングパテやメントール等があります。、これらの薬剤の使用については、安心安全の観点や効果について、意見の相違が見られます。空気より重いアカリンダニの防除剤(メントール等)を上部より蒸散させます。そのために上蓋とスノコの間に、袋に入れたメントールの容器や強制蒸散装置を置くための十分な空間と、蒸散した気体が外に漏れない機密性を確保することが重要です。


❷巣箱の冬の保温と、夏の通風という相反する条件を満たすこと

スノコの穴は、幅6mm以下だとハチがロウでふさぎます。10mm以上だと、冬の保温と巣碑の接着に支障があります。穴の幅が8mm前後でかつ、メントールまたはギ酸を入れる容器の高さを確保しなければなりません。

上蓋までの高さが10mm以上だと、上蓋とスノコの間の空間に、無駄巣を多く作られます。麻布で、この空間全体を覆うと、無駄巣防止と、冬の保温性が高まりますが、スノコ上部へのショートニングパテの投与や、メントールの蒸散促進、ハチの上下移動を阻害するため、現在は分蜂群巣箱入居前後または、投与前後を除き麻布は使用していません。

❸スノコの、巣箱からの着脱と制作が簡単なこと

現段階で比較的効果的と思われる方法1  
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まとめ

メントールは16℃以上ないと十分に気化せず、41℃~43℃で液化し一気に気化といわれています。
したがって、厳冬期には効果が少なく、夏季には過剰蒸散による悪影響が心配されることになります。

この期間の蒸散をコントロールする必要があると感じています。

 

メントールの投与については、次の点に配慮する必要があると思われます。
❶巣箱上部の構造
スノコと上蓋の組み合わせ適切か、巣箱上部は十分な密閉性は保たれているか

❷投与の期間と年間投与の可否

真夏を除き適時投与するか、または固体による年間投与するか


❸投与の形状は何を選択するか(固体・結晶体・粉体)
結晶のまま使用するか、温度差により形状を使い分けるか

❹巣箱内の投与の場所と量は

スノコの上だけでよいか 一定期間内の投与量は適切か 温度により量を変える必要はあるか
 

❺他の方法との併用、または変更
ショートニングパテ等の併用や、秋から冬にかけての低温時の蒸散を促す、強制蒸散装置の投入も必要です。どれにするか予め選択しておくことも大事かと思います。

メントールの投与適温一つとっても、日々の気温の変化や、同じハチ場でも、設置ポイントにより日当たりの程度が異なるため、一様ではありません。

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