コロニーの保全その2 蜂児捨てとSBV病対策
蜂児捨て(子だし)
サックブルート症の症状として、蜂児捨て(「子出し」ともいう)が挙げられます。
ただ、下上段の写真の「蜂児捨て」の原因はサックブルーウイルスでなく、後述の❸の単独の原因で、対策③により、解消しました。このように「蜂児捨て」は原因はいくつもあり、SBVもその一つです。
SBV症(サックブルートウイルス症)とは
蜂児捨てされたものに、初期症状として、頭部に写真のように、透明の液を含んだ固い袋(サック)がみられる。巣碑の中のものは黒色のものもある(写真は日本養蜂協会ホームページより転載)
・ウイルス感染により、蜂児が袋状(頭部側に透明な水がたまった状態)になり、死亡する病気です。
・大量の蜂児捨て(働き蜂が巣房内で死亡した蜂児を巣外に運ぶ行動)が認められます。
・成蜂も感染しますが、症状はでません。
・セイヨウミツバチよりもニホンミツバチで重い症状がみられます。
「蜂児捨て」の原因は
➊サックブルートウイルスによる蜂児捨て
②農薬被害による蜂児捨て
❸夏の異常な巣箱内温度上昇による蜂児捨て
④エサ不足による不要蜂児の破棄
⑤巣碑の育児域をスムシに侵食されての蜂児捨て。
⑥冬の異常な巣箱内温度低下による蜂児捨て
等の単独または、複合した原因が考えられます。
また、過去には流蜜期や給餌による、急激な貯蜜による巣碑の貯蜜域の不足が蜂児出しの原因と一つとされていましたが、現在では否定的な意見が多数です。
「蜂児捨て」の対策は
SBVを始め、原因により対策は個々で異なります。
短期の少数の蜂児出しは、それほど心配することはなく、自然に解消します。
しかし、写真のように、多数の蜂児出し、または長期に渡る場合は、特に①②の原因を疑う必要があります。
各々、単独の原因なら
➊についてはウイルスが原因で、有効かつ有力な対策は、ありません。
飼養道具の洗浄および消毒を徹底する。(煮沸、0.1%次亜塩素酸ナトリウムに30 分浸漬)
感染群の淘汰をおこなう。
民間療法として「えひめAI」という液の散布による防除を、一部の趣味の養蜂者が行っていますが、効果についての信頼できるデータや、確実な情報は確認できていません。
②可能なら、早急に巣箱を農薬の散布域とミツバチの行動範囲域とが重複しない場所への移動が必要です。
③については、少し早めの継ぐ箱を行う・巣箱の底板を網に変更し、スノコ状の中蓋を設け、巣箱の内に換気を促す・遮光ネット等で巣箱に直射日光に当たるのを防ぐ等の措置で、蜂児捨てがなくなります。
④については、砂糖水や人工花粉等の給餌も場合により有効です。
⑤については、巣枠式飼育等の、スムシなどの侵食域が視認できるなら、その部分を削除してください。
⑥については、巣箱全体を風雨に強く、湿気の籠らない、保温性の高い材料で覆う。巣箱の板を厚いものに変える。
ただし、これらが単独の原因でなく複合原因の場合(むしろ、こちらが多いとの推測されます)対策も複雑となり有効な手立てを見出すのは困難です。