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 日本ミツバチって何?

1日本ミツバチ養蜂の基本

 

(1)  日本ミツバチ養蜂の意義

日本ミツバチは、日本に住む在来種です。西洋ミツバチが導入される、はるか昔から、日本人は、このハチとつき合ってきました。

西洋ミツバチと異なり温和な性格で、飼育しやすく、趣味の養蜂に最適です。

巣箱作りを始め、分蜂群の取り込み、蜜源植物の育成等、養蜂に関わる多様な技術や知識を探求することは、喜びと楽しみを与えてくれます。

ミツバチは、個体の集まりである「群れ­­=社会」を単位とする「超個体」です。

この群れが一つの生命体として機能する「超個体」という不思議な存在は、知的好奇心を刺激します。

また、花粉媒介の効果で、周囲の野菜や果樹の実りをよくし、ささやかながら、地域の農業に貢献することができます。(図のように、ユーロ圏では、ミツバチは家畜の中で3番目に位置付けされています)

ミツバチの飼育を通じて、生物の多様性に触れ、自然環境の保全や種の保存に役立ち、同好の人たちとの、つながりが広がります。

  このように、日本ミツバチの養蜂の全過程を楽しく体験し、謙虚な心で、ミツバチと共に暮らして生きたいと思います。

                        

                  

 

 

 

 

                         

(2)  飼育前の予備知識 日本ミツバチとは

 

   ・日本に昔から住んでいる在来種の野生のミツバチです。

 ・めったに人をささない温和な性格、ですが、

   臭いに敏感で、人が香水など臭いを身にまとうと攻撃します。

   とくに、秋から冬には、やや攻撃的になります

   また、自分や仲間が攻撃されると、防御のために反撃します。

 ・西洋ミツバチと異なり、多種の植物から蜜を集めます。百花蜜といいます。

 ・巣箱や周囲の環境が悪いと巣から逃亡します。

 ・西洋ミツバチと比べて、世話がかかりません。

 ・巣箱に取り込んだ段階で、初心者は最初の峠を越えたといえます。

 ・巣箱から大よそ半径2Km以内が生活圏で、500m以内が通勤圏とも言われています。

 

 

   (ほぼ原寸大 ♀)

(3)ハチの種類による巣板の構造
下図のようにハチの種類により、巣板の構造に違いがあります。  

スズメバチやアシナガバチは水平に巣板を作り多層構造に形作るの対して、ミツバチは垂直に巣板を作ります。スズメバチやアシナガバチは、種類により好みが分かれるものの、閉鎖空間や開放空間どちらでも巣を作るのに対して、ミツバチは開放空間に巣を作ることは、極めて稀です。
生態からもミツバチは、飼育に適していると言えそうです。
(注)スズメバチの一種のクロスズメバチを、捕獲後に巣箱で飼育される方もいます。

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(4)ミツバチの性決定の仕組み「単数倍数性(半倍数性)」とは

 

普段私たちが目にするハチは、ほとんどが働きバチです。実はすべてメスです。意外に思うかもしれませんが、これにはハチの特殊な性決定の仕組みがかかわっています。この仕組みを「単数倍数性」といいます。

生物の生きる目的の一つが、自分の遺伝子をより多く残すことです。

しかし、働きバチは卵を産めないので、次の世代には遺伝子を残せません。
ではなぜ、次の世代も働きバチがでてくるのでしょうか
(ダーウィンの進化論では、「生物はより多くの子どもを残すよう進化し、そうでない性質をもつ個体は数を減らす」としています)

 

例えば、人では、どれくらい次世代に遺伝子が伝わるかを見てみると、
人の場合は通常、父親、母親は、それぞれ、祖父、祖母から1セットずつ、23の染色体を受け取っています。

 

子が生まれるとき、両親から半分ずつ遺伝子を受け取る。自分と同じ両親から生まれる兄弟・姉妹の遺伝子の組み合わせは4通りです。

 

 

 

 

 

この時、兄弟・姉妹の中には、自分から見ると
❶自分と完全に遺伝子が一致するもの
❷遺伝子の半分だけが一致するもの(母の遺伝子半分と父の遺伝子半分の一致する、それぞれに2通り)
❸完全に遺伝子が異なるものがいることになります。
平均血縁度は、兄弟・姉妹で50%、親子で50%となります。


ところが、ハチは人とは違うメカニズムがあります。ハチは性別を決める仕組みが人とは違い、「単数倍数性の性の決定」といって、受精卵からメス、未受精卵からオスが生まれる仕組みになっています。だからオスは半分しか遺伝子を持ちません。


父と、母である女王バチから遺伝子を受け取った働きバチがいたとします。この時、同じ両親から生まれた働きバチには、自分と完全に遺伝子が一致するもの、遺伝子の半分だけが一致するものの2通りがいます。

 

一方、女王バチと全ての働きバチは、50%の遺伝子が同じです。

 

 

 

よって、平均血縁度は、姉妹で75%、母子で50%となります。まとめると、ハチの場合は、母よりも姉妹の方が自分にとって血縁度が高いということになります。
つまり、自分の子どもを残すよりも、自分の姉妹がたくさんいた方がいいということになります。働きバチは、女王バチのために行動しているように見えて、自分の遺伝子を多く残すために協力しています。

 

また、オスバチは未受精卵から生まれてきます。半数体といって、遺伝子(の乗っている染色体)を半分しか持っていません。生まれてくるオスバチは遺伝子の全てを母親である女王バチから受け継いでいるため、一種の単為生殖と考えていいでしょう。これに対して、受精卵から生まれるのがメスです。メスバチには父親がいますが、オスバチには父親がいません。

 

受精させない半数体がオスになり、受精させた二倍体がメスになる。このような性決定の仕組みを、「単数倍数性(半倍数性)」といいます。オスバチは次の世代に遺伝子を残すためだけに生まれ、巣作りや子育て、えさの調達や巣の警備など、全ての作業はメスの働きバチにより行われます。人とは、性別の定義が違うようなものなので、働きバチがすべてメスとはいっても、その意味は少し異なるともいえます。
 

引用

自宅で学ぶ高校生の生物「倍数性・倍数体」

manabu-biology.com/archives/倍数性・倍数体.html


NHKアーカイブス 「スズメバチの生態を知ろう」(視点・論点)  
www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/284171.html

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(5)働くハチと働かないハチ

経済学の理論パレートの法則(80:20の法則)とは無縁の、科学的根拠のない俗説に、2-6-2の法則があります。

これは以下のような俗説です。

・働きアリのうち、働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリは働かない。

・働いているアリだけを集めても、一部が働かなくなり、同じように2:6:2に分かれる。

・働かないアリだけを集めると、一部が働きだし、同じように2:6:2に分かれる。

このことは、以下の新聞記事のように、科学的に解き明かされました。

働かないハチの存在も、以前から確認されていました。

まんざら、類縁のハチとも、無関係ではないと思われます。
 

​『(前略ただし、と長谷川言う。アリの世界では「フリーライダー」と呼ばれ、仲間を装って外部から侵入し、働かずに自分の卵を産んで育てさせるアリがいる、アリはフリーライダーを見つけたら必ず殺します。働く気がなくて働かないやつは絶対に許さない。人間世界よりずっとシビアです』 朝日新聞 GLOBE  2018 No211より

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